2006/09/18

ナイス・ゲーム。

さっきやってた U-17 アジア選手権の決勝が素晴らしいゲームだった。
技術の高さ、ゲーム運び、闘う姿勢。どれをとっても素晴らしかった。
ゴールはどれも素晴らしいアイデアと技術が光ってたファイン・ゴールだったけど、
ゴールに限らずゲーム全体を通じて素晴らしい出来だった。

しっかりとした技術をベースに、個々の選手が自分の武器でしっかり勝負してたし、
0−2 にされた後の闘い方も含めて、
それぞれの選手、そしてチームとしての気持ちの強さが伝わってきた。
北朝鮮もわかりやすく特徴を前面に押し出してくるチームで、
しかもけっこう強かったこともあって、試合の中に何度も大きな流れがあって、
その局面々々でめまぐるしい鬩ぎあいがあって、
すごく「サッカーらしい」、緊迫したいいゲームだった。最近観た試合では No. 1 かも。

それにしても、上手いね、みんな。ベンチ・プレーヤーも含めて。
ディフェンス・ラインはキチンとつなげるから安易にクリアしない。
中盤から前の選手は技術もアイデアも持ってるし、守備もする。
攻撃・守備って分けて考えるんじゃなくて、
どっちも含めてサッカー、相手ボールなら取りにいくし、
マイ・ボールならつなぎながらゴールを目指す、っていう
当たり前の意識を全員がキチンと持っている感じ。
それは、つまり、全員がキチンと「サッカーをしてる(できる)」ってこと。
当たり前のことだけど、それがキチンとできるって、かなりレベルが高い。
だから、ひとりひとりの状況判断も早いし、意味のないプレー・意図のないプレーが少ない。
これだけのレベルの試合はそんなにはお目にかかれない。J リーグや A 代表でもね。

まだ育成年代だからまだまだこれからどうなるかはわからないけど、
こういうゲームの経験はきっと血となり肉となる、
こういうゲームこそが経験値になるんだと思う。

いやぁ、いいもん見せてもらいました。

2006/08/12

Primary.

primary
ー a. 最初の、原始的な、初期段階の、 首位の、第 1 位の、主要な、
   本来の、根本の、初歩の、初等(教育)の、等

ー n. 第一位の[主要な]事物、原色、等

辞書を引くとこんな風に載ってるわけですが、
マリノスで「プライマリー」といえば下部組織の小学生年代( 3-6 年生以上)のチームのこと。
追浜と新子安に2チームあって、新子安は全国大会 2 連覇中。
10 年後のマリノスを考えるとついにやけてしまうわけですが、
今年はなんと 6 月に行われた神奈川県大会の決勝に新子安と追浜が進出、
神奈川県代表の 2 枠を独占してしまったのです。

 
全国大会(正式には U-12 全日本少年サッカー大会)は
全 48 チームでグループ・リーグ→各グループの上位 2 チームが決勝トーナメント進出という、
サッカー界のスタンダードとも言える形式の大会。
日本の学校スポーツは、従来トーナメント方式が主流(甲子園とかね)なんだけど、
サッカー界ではグループ・リーグという形式に力を入れてる。
トーナメントは、弱いチームは 1 試合しかできないし
(クジ運が悪かったら弱くなくても 1 試合で終わっちゃう)、
どうしても「勝ち」にこだわらざるを得ない。
当然、本来、最も経験になり、力になるはずの試合数にかなり差がついちゃうし、
内容より結果重視になりがち。
その点、グループ・リーグなら最低限の試合数は確保されるし、
それほど力の差がない相手との試合がある程度担保されたり、
グループ・リーグ全体を見越した戦い方を経験できたり
(必ずしも目先の勝敗だけが大事ではない)するので、
特に育成年代ではとっても大事なのです。

当然、勝ち上がるのは難しいんだけど、
なんと(!)、マリノス・プライマリーの新子安と追浜が揃ってベスト 4 に進出しちゃったのです。
これはもう、観に行くしかないということで、
クソ暑い平日の昼間に西が丘まで行ってきたのでした。
第 1 試合は王者・新子安がヴェルディに力の差を見せつけて快勝。
やっぱり、見慣れたユニフォームの選手たちが、
あの緑のユニフォーム(最近戦ってないからあまり観てないけど)に勝つのは気持ちいい。
で、第2試合が追浜 vs FC 浦和(レッズではない)。
全然予備知識なしで観たんだけど、やっぱちょっと自力の差はあったかな。
追浜も何度かいいカタチはあって、
そこでひとつでも決めてればもうちょっと違った展開にもなったんだろうけど。
やっぱり、チャンスをキッチリ決めた浦和のほうが一枚上手だった。
特に 1 点目のシュート。落ち着いてファー・サイドに流し込むあたり憎たらしい。
残念ながらマリノス同士の決勝戦は実現しなかったけど、まぁ、仕方ない。
いいゲームをしたし、これでも十分快挙だし。結果は結果として受け止めないと。
それに、実は、浦和はグループ・リーグで新子安と同じグループで、
しかも新子安が負けてるんだよね。
ってことは、やっぱり正真正銘の決勝戦に相応しいカードってことだ。
明日のファイナルは激しい試合になりそう。



あ、ちなみに、こどもだと思ってナメちゃダメね。
そこいら(どこいら?)の草サッカーなんかより、よっぽど「サッカー」になってるよ。
特に、ファースト・タッチとかポジショニングとか、レベル高い。
やっぱり、基礎体力とか体格は個人差が大きいんで
ちょっとかわいそうなところもあるけど、
将来、トップ・クラスになって海外でプレーしたりすれば
そういうケースは十分あるわけで。正直、勉強になる。

あと、もちろん、5-12 歳が技術や感覚を磨くゴールデン・エイジなわけで、
この年代がそのクラブの将来を左右するって意味でも大事。
こないだ代表デビューしたタナカハユマにしてもクリハラユーゾーにしても
サカタダイスケにしても下部組織出身なわけで、
そういう意味では、今日、観たチームが 10 年後のマリノスのベースになってるはず。
文字通り、「プライマリー」。いやぁ、頼もしいね。

だって、こういうベースがあって、積み重ねがあってこそのクラブ、
そして日本サッカーだからね。オシムオシム言って一喜一憂してるヒマがあったら、
まぁ、U-12 とは言わないまでも、もうちょっと足下をキチンと見たほうがいいよね。

関係ない(なくもない?)けど、
一連のオシム報道(あえて、代表報道とは言いません。
ましてや、「オシム・ジャパン」なんて絶対言いません。
ライターとして「オシム・ジャパン」とか絶対言えないし、
言ってる人の感覚が理解できないし、信用できないんで)を見ていると、
みんないかに J リーグに興味がなくて、観てないかがよくわかって面白いね。
もしかしたらサッカー自体にも興味がないのかも? なんて思ったり。
まぁ、会長がガンなのか、メディアがガンなのか、ファンがガンなのか、
鶏と卵みたいな難しい話だけど。

ちなみに、明日のファイナルはTVで放映アリ(NTV 10:30〜)。
生じゃないっぽいけど。

2006/07/31

「まだ見せてもらってませんよ」。

 

「まだ君の才能は見せてもらってませんよ」と言っていたのは
『スラム・ダンク』の安西先生ですが、
別に『スラム・ダンク』の話じゃなくて、マリノスの話。

で、今シーズンのマリノスはっていうと、
まぁ、なかなか思い通りにいかなくていろいろ苦労してるわけですが、
それがサッカーってもんだ、って感じなのです、正直なところ。
開幕当初のブラジル人3人のプレーにはワクワクしたし
(特にマルケス! あんなプレーがしたい!)、
マツダは本当にいい選手になったと思うし(まぁ、だいぶ遠回りをしたけど)、
マグロンもかなり好きなプレーヤーだし(上手いわりに案外激しいね)、
今日あらためてウエノヨシハルには惚れ直したし、
今シーズンのカワイリュウジのプレーには
正直ビックリしてるし(なんか上手くなってねぇか?)。
でも、素晴らしいサッカーかって言えば、決してそんなこともなく、
ボロボロかっていえばそんなこともないわけで。
結果はもちろん不本意なんだけど。
でも、サッカーなんてそんなに思った通りに上手くいくわけはないわけで、
過去の優勝だって連覇したときだって別にパーフェクトだったわけはもちろんないし、
だからこそ面白いわけで。
今日は久々に勝ったけど、
今日の試合(2−0 で勝利)と前節のジュビロ戦(1−3 で敗戦)を比べても、
少なくとも内容はそれほど大差ないと思うわけで。
そこにあるのはちょっとした差、ちょっとした「勝負のアヤ」みたいなモノで。
ジュビロとアルビレックスの差もあるし。
今日だって、アルビレックスで良かったぁ、って思った場面はいくつかあったし。
そこでちょっとした差が生まれてたら結果は違ってただろうし。
まぁ、mixi やらブログやら、いろいろな書き込み、
それこそ「試合は観てないけどアヴィスパに勝てないなんてあり得ない!」とか
言ってる意味不明なモノとかを見ると、
大きな違和感を感じてちょっぴり寂しくなるわけですが、
まぁ、それはメディアを見てても大差ないので、
まぁ、もう呆れるしかないわけですが。

まぁ、それはともかく、今日はちょっと、
久々に、不覚にも目頭が熱くなってしまったのです。
ヤマセコージのゴールを観て。
正確に言うと、ゴール後に、マツダに頭を抱えられて、
髪の毛をクシャクシャにされてるヤマセの姿を観て。
24 歳の選手とは思えないほど数多くのケガ、
しかも靭帯断絶(両足やってる!)だの、ヘルニアだの、
選手生命を脅かしかねないタチの悪いヤツに慢性的に苦しんできてて
(骨折とかとはわけが違って、'アスリートとして'完治するのがすごく難しい)、
レッズ → マリノスっていう J リーグでは屈指の大型移籍も経験して、
当然、いろんなヤツからいろんなことを言われたであろうわけで、
しかも、決して軽くはないマリノスの 10 番を背負ってるわけで。
そんなヤマセがヘルニアの手術後、やっと前節から戻ってきて、
今日、330 日ぶりのゴールを決めたんで。
ゴール自体はゴール正面・ドフリーの、
だた蹴るだけのこれ以上ないごっつぁんゴールだったけど、
こんなに感動したごっつぁんゴールはなかなかないなぁ、と。
なんか、マルケスがこぼれ球を追いかけてるときには、
ゴール前でドフリーで待ってるヤマセの姿が見えてて、
あ! ヤマセだ! と思ったら、グッときちゃった。
「サッカーの神様」とか、ライターとしては安直に使っちゃいけない言葉だと思うけど、
ちょっと神様に感謝したくなっちゃった。

そういえば、安西先生は「あきらめたらそこで試合終了だよ」とも言ってたね。
まぁ、オレはあまり好きじゃない三井(なんであんなに人気があるんだろう?)と違って、
ヤマセは自分から投げ出したりはしなかったわけだけど。

っていうか、マリノスに来て初めて、オレの知ってたヤマセコージ、
コンサドーレ時代に観て「コンサドーレが J2 に落ちたらウチに来ねぇかな」と惚れた
ヤマセコージの片鱗を観た気がする。
マリノスに来てからもマトモな状態で試合に出てたことなかったし。
でも、前節はボチボチだったけど、
今日はゴール・シーンだけじゃなくて随所に「らしさ」が見れた。
やっぱり、プレーのリズムを変えられる、
みんなとは違う像が見れる、ってのは特殊な才能なんだね。
そういう意味では、やっと「ようこそ横浜へ」って感じかな。
まぁ、まだまだ「片鱗」だけどね。
こんなもんじゃないでしょ。こんなもんじゃないよ。
っつうか、オレの知ってたヤマセコージ以上になってるでしょ、きっと。
それぐらいの経験はしちゃってるから、いろいろと。
もっともっと大きくなるでしょ。
マリノスは 10 番はそれくらいじゃないと。
こういうのがあるからやめられないんだよね。

あぁ、どっかに「山瀬、復活弾!!」とか
一面にするスポーツ新聞なねぇかなぁ(笑)。
あったらスポーツ新聞嫌いなオレでも買っちゃうのに。
ねぇだろうなぁ、やっぱ。
そんなことばっか言ってるから、売れっ子サッカー・ライターになれないんだけどね。

2006/05/19

「美しく勝利せよ」。



「美しく勝利せよ」。

あのドリーム・チームを率いてバルサの黄金時代をつくり、
「永久ご意見番」として辛辣且つ信頼できるスタンスで
バルサを愛し続ける「フライング・ダッチマン」、
ヨハン・クライフは彼のサッカー哲学をこう語り、
この考え方は今もバルサに脈々と引き継がれている
(上手くいってなかった時期もあったけど、迷走しながらも引き継ごうと努力してきた)。

そのバルサが、その哲学を実践して、下馬評通りビッグ・イヤーを獲得した。
それはもちろんバルセロ二スタとしては超ナイスだし、
サッカー界にとっても素晴らしいことだとは思うけど、
さっきあらためて試合を見返してみて、
やっぱり「サッカーは難しいなぁ」とつくづく思ったのでした。

アーセナルの出来も良かったし、相当ガッツも見せてた。
まぁ、アーセナル・サイドが判定に関して文句を言いたくなる気持ちはよくわかる。
確かに際どかったし。でも! 残念ながらムリです。
速すぎるから、トップ・スピードのエトォ。人間が肉眼で見えるスピードじゃない(笑)。
レッド・カードのシーンもそうだし、エトォのゴール・シーンもそうだし。
これは仕方がないのです。

「サッカーは難しいなぁ」と思ったのはアーセナルの先制のシーン。
あういう展開で数的不利なチームがセット・プレーでサクッとゴール、ってのは、
まぁ、別にビックリすることではないけど、
あの時間帯に取れちゃったことで逆に難しくしちゃったよなぁ、って。
ある程度、リスクをかけて点を取りにくるバルサの攻撃を凌ぐには 72 分は長過ぎる…。
もちろん、あんな状況だから贅沢は言えないんだけど、
もうちょっと 0-0 でのらりくらりといきたかったところだったよね。
点を取ることが難しいサッカーにおいて、点を取ったことで難しくなるなんて…。
まぁ、キッチリこじ開けちゃうバルサもさすがだけど。
後半から入ったイニエスタも効いてたし。
若いのにポイントをキチンと心得てる若年寄系。デコと並んでいい仕事してた。



でも、勝負を分けたのはオッサンだったね。なっつってもラーション。
メッシがさんざん話題をさらった今年のバルサだけど、
大事な所でキッチリいい仕事をしてくれました。
もう、これで彼は一生、永遠にバルセロニスタから感謝され、愛されるね。
ジュリもメチャメチャいい仕事してたし。
やっぱ、若者の勢いも大事だけど、大一番では経験がモノを言うね。
まぁ、勝負を決めたのが伏兵・ベレッチだったのは予想できなかったけど。
なんとなく、もうちょっとアーセナルが耐えて(場合によっては延長くらいまでもつれて)、
最終的には力尽きてバルサかな、と思ってたんだけど。
一気にひっくり返せるのはさすがだね。
アーセナルにとって一番不運だったのは、勝負のツボを心得ているベテラン、
まぁ、具体的にはピレスとベルカンプを
活かせなくなっちゃったことだね(特にベルカンプは観たかった!)。
そういう意味では、レッド・カードじゃなくて、
アドバンテージ+得点+イエロー・カードって判定になってたら、
その後の展開はもっと面白かったかもしれないけどね。

まぁ、試合自体は十分面白かったけど。
リュングベリも久々に「らしい」プレーを見せてたし、
アンリは相変わらず「ワン & オンリー」のアンリだったし。
プジョルとの 1 対 1 とかシビれたね。
サイドライン際でプジョルをジャンプしてかわして、
ボックス近くでマルケスをもう一度ボールを浮かしてかわしたシーンとか、
もう、アンリ以外ではあり得ない!
しかも、マルケスがかわされた後にカバーに入ったのがもう一回プジョル!
さすがバルサの魂! 火花バチバチな攻防は見応えあったね。
キーパーの出来がどっちも良かったのも試合が面白くなった要因かも。
アンリやエトォのシュートをあんなにとめるなんて!
もちろん、オレのお気に入りのジウベルト・シウバもデコも効いてたし。
ピッチの全ての場所で異常にレベルが高かった。

このバルサを率いているのが「ブラック・スワン」、
ライカールトだってのも感慨深い。
クライフ同様、オランダが生んだスターであり、
10 年以上前に「現代サッカー」を体現していた素晴らしい選手であり、
現代サッカーの基礎となっている当時の最先端のサッカーを
体現していたチームの「心臓」だった選手なんだから。
個人的にも大好きな選手だったし。デカくて、強くて、上手くて、美しくて。
そういう選手が、今、バルサを率いて、こういうチームで頂点に立つなんて、
ちょっと出来過ぎなんじゃね? って思っちゃうくらい。
「Sexy Football」を唱えたのはフリットでしたが、
「Save Sexy Football」を実現してくれたのがライカールトだったなんて!

やっぱり、今、最高のサッカーはここにあるね。
代表よりクラブにあるし、W 杯より CL にある。
あらためて思い返してみても、CL はクオリティーが高い。
優勝したチーム以外にも、目を魅くチームがたくさんあるし。
ミランもそうだし、今シーズンだったら何と言ってもビジャレアル!
ここ数年を思い返しても、モナコだったりポルトだったり PSV だったり。
ビッグ・クラブがビッグ・クラブとしての力とクオリティーをしっかりと発揮しつつも、
名前だけじゃ勝てない。全ての面でクオリティーが圧倒的に高い。
01-02 シーズンもそうだったけど(レバークーゼンが大旋風を起こして、
ファイナルではジダンのスーパー・ボレー!)、こんなのを見せられた後に、
W 杯を観て楽しめるか、不安です。



どうも、今年はやっぱバルサの年らしい。
バルサ自体はもちろん、アーセナルのセスク・ファブレガスだの、
ビジャレアルのリケルメだの、UEFA 杯を穫ったセビリアのサビオラだの、
バルサ人脈の活躍が目立ったからね、今シーズンは。
これも良い傾向。