2005/05/18

決定と変更。

今日、ある仕事の取材で静岡県の清水に行ってきました。
初清水。元祖・日本のサッカーどころ。
目的はサッカー解説者、っていうか、元日本代表であり、
いわゆる「アトランタ世代」以前の日本サッカー界における
エリート中のエリート・プレーヤーであり、
サッカーどころ・静岡でも
屈指のテクニシャンとしてならした風間八宏氏のインタビュー。
お題目は代表についてだったんだけど、オレの本当の目的は、
風間さんが中心となってやっているスペシャル・プログラム、
「清水スペシャルトレーニングセンター」
(あんまり好きな略し方じゃないけど、略して「スペトレ」)について聞きたい、
できれば観たい、ってこと。
いろいろ入稿物があって珍しく午前中からバタバタと仕事をやっつけて、
絶好の天気の中、張り切って新幹線に乗ったのでした。

静岡で新幹線からローカル線に乗り換えて
10分ほど東京方面に戻るとそこは清水。
かなりほのぼのな雰囲気。電車短いし。
ホームの一方から海が見えて、反対側には山々が。
で、空が広い!着いたのは約束の時間の30分以上前。
勝手がわからずにいるのはどうもイヤなので、
駅の地図をチェックしつつちょっと駅周辺をウロウロ。
ちょっと歩けば街のサイズとかなんとなくわかってくるし。
サッカー同様、ルック・アラウンドが大事。
街のサイズはそれほど大きくなく、市街地は平らでなかなかナイスな規模。
もともと「静岡」って場所は気になっていただけに、なかなか興味深い。
そんなこんなしてる間に約束の時間。
早速風間氏に連絡しつつ待ち合わせ場所の駅に戻る。
駅周辺に話を聞けそうな喫茶店等は一切見当たらない。
どこで取材するかなぁ、なんて思っていたら風間氏登場。
「さ、行きましょうか」と導かれるままに車に。
早速、車中で清水について質問。
曰く、「仕事さえあればいいところだよ」と。
ヤマハとかローランドとか田宮とか、
「世界に誇るべきメイド・イン・ジャパン」を数多く抱える静岡だけど、
清水にはあまりないらしい。
でも、海もあるし山もあるし海のモノも山のモノもお茶も美味いし、
気候もいいし、関東も関西もアクセスしやすい。
風間さんが解説をしているフジテレビまでは
高速を使えばそれほどの時間ではないらしく、
「家から CX まで信号は5個くらい」とか。
街の中なら平地だからどこでもチャリで行けるらしいし。
そんなこんなしてる間に数分で到着したのはなんと風間家。
フツーに家におジャマしての取材になりました。
いきなり「こんにちは!」と元気な挨拶。
息子が2人、元気に登場。
いかにもスポーツ・マンな挨拶が清々しい。
とは言いつつも家の中でもドリブルやらリフティングをしてる。
さすが。礼儀正しく奔放に育ってるらしい。

でもって取材。代表のことをチャッチャと進行。
オレが信頼してる数少ない解説者のひとりだけあって
(だから今回もお願いしたんだけど)、
あまり代表に興味のないオレも楽しめる話をいろいろしてくれて、
いろいろモヤモヤしてたことを晴らしてくれました。
風間さんは、他のインチキくさいサッカー・ジャーナリストや
解説者がよく考えずに使うような安直な言葉とはちょっと違う言葉を使う、
ちょっとした「パンチライン職人」だとオレは思ってるんだけど、
その中で一番引っかかったのは「決定と変更」ってこと。
曰く、「サッカーには決定と変更しかない」と。
プレーを止めることもできないし、やり直すこともできない。
だから、プレーヤーが自分で「決定」し、上手くいかなければ瞬時に、
自分で「変更」しなきゃいけないんだ、と。
正しい。そして、深い。
そして、これが日本人にはかなり難しい。
そう、決定と変更なんだよ。それが苦手なの。それができないの。
でもそれができなきゃダメなの。大事。超大事。
サッカー選手としても、人としても。
つまんないシステム論なんかより全然スッキリする。
他にも、「技術のスピード」とか、
いろいろナイス・パンチライン炸裂で、使える言葉を頂きました。

で、スペトレ。なんとなく聞いてみたら今日これからだとか。
「観に行ってもいいッスか?」と聞いてみると快く快諾。
一緒に連れてってもらいました。
場所は清水商。キヨショーです。キヨショー。
ナナミもヨシカツもシンジもコバヤシダイゴくんも、
みんなここでボールを蹴ったんだ、と思うと感慨もひとしお。
ちょうどサッカー部の練習が終わるところで、
名言「勝因は川口能活」でお馴染みの大滝監督もいるし。
どっから見てもただの学校なんだけど、日
本サッカーにもたらした功績は計り知れない場所なのです。
もちろん、風間さんもキヨショー出身だし。
それにしても、グラウンドの隅で観てるとやたらと挨拶される。
通りかかった学生がみんな元気よく「こんにちは!」。
かなりキチンとしてるらしく、
ちょっと緊張しながらこっちも負けずに「こんにちは!」とか言ってみる。
当たり前だけど、ちょっと新鮮。

そんなこんなしてるうちにボツボツとこどもたちが集まってくる。
なんとなく遊び感覚のミニ・ゲームがスタート。風間さんも混じってる。
しかもメチャメチャ上手い。
しばらくすると25人くらいのこどもが集まってる。
スペトレってのは、去年から始まった週1回のスペシャル・プログラムで、
特徴は小学生から高校生まで一緒のメニューでプレーしてること。
しかも、メニューというほどのメニューはなく、
やってることは基本的なボール回し、パス練習、シュート練習、ゲーム等々。
ごくフツー。
ここに集まってる子はたちは選抜されたこどもたちだから
当たり前のようにメチャメチャ上手いんだけど、
ビックリしたのは小学生も高校生を相手にフツーにプレーしてること。
体格も筋力も走力も相当差があるのに。
ここがキモ。
つまり、差があるのは当然で、それはたとえ同年代でも、
足が速いヤツ、力があるヤツ、背がデカイヤツ…、それぞれ差があるだろ、
だったら、その差をキチンと認識した上で
自分は何で勝負すればいいのか考えてプレーしようよ、ということ。
コーチ陣は風間さんもはじめ、地元のそうそうたるメンツであるにも関わらず、
あまり口を出さない。教えるんではなくて考えさせる。
ヒントは出すけど決まったカタチをやらせたりはしない。
シュート練習でも決まったカタチじゃなくて、
ドンドン自分でアレンジさせるし、いいアレンジはドンドン誉める。
ゲームでは年齢に関係なく要求し合う。
小学生は当然マトモにやったら高校生には勝てないわけで、
じゃあどうするかを考える。
一方の高校生も、日頃体験しないような間合いに
チョロチョロしてる相手(しかも上手い)にどう対処するか考える。
ちょっと気を抜けば小学生にマタ抜きされるし、
ワンツーとかドリブルでチンチンにされるし。
まさに、インタビューで言ってた「決定と変更」やら
「技術のスピード」やらを実践してる。
しかもみんなスゲェ楽しそうにプレーしてる。
まだまだ試行錯誤中らしいけど、
オトナが真剣にこどものための環境をつくって、
こどもが活き活きとプレーしてる。
風間さんの上の子もボール・タッチもボディ・バランスもアイデアも抜群で、
家で会った時の幼さがウソみたい。
こりゃあ、上手くなるわけだ、と。
まだまだスペトレの進め方自体も試行錯誤中らしいし、
今は対象が選ばれた子たちに限られてるけど、
こういうカタチがどんどん、しかも自然にいろんなレベルで広がれば、
日本人のメンタリティーにもちょっとは変化がでてくるのかな。
何年後かがスゴイ楽しみ。

最近、日本サッカー界に違和感感じまくりだっただけに、
いいモノを見せてもらったっていうか、
なんか前向きな感じでスゲェ良かった。
終電の時間まで観てた甲斐がりました。

2005/04/17

Craques da vida.

'craque' とは、ポルトガル語で「名手」のこと。
日本で言う「司令塔」とは違い、ポジションやプレー・スタイルに縛られず、
ゲームを支配し、試合を決められる選手のこと。

'vida' はポルトガル語で「生活・人生」の意味。

つまり、'Craques da vida' とは、「人生のクラッキ」ということ。