2006/05/19

「美しく勝利せよ」。



「美しく勝利せよ」。

あのドリーム・チームを率いてバルサの黄金時代をつくり、
「永久ご意見番」として辛辣且つ信頼できるスタンスで
バルサを愛し続ける「フライング・ダッチマン」、
ヨハン・クライフは彼のサッカー哲学をこう語り、
この考え方は今もバルサに脈々と引き継がれている
(上手くいってなかった時期もあったけど、迷走しながらも引き継ごうと努力してきた)。

そのバルサが、その哲学を実践して、下馬評通りビッグ・イヤーを獲得した。
それはもちろんバルセロ二スタとしては超ナイスだし、
サッカー界にとっても素晴らしいことだとは思うけど、
さっきあらためて試合を見返してみて、
やっぱり「サッカーは難しいなぁ」とつくづく思ったのでした。

アーセナルの出来も良かったし、相当ガッツも見せてた。
まぁ、アーセナル・サイドが判定に関して文句を言いたくなる気持ちはよくわかる。
確かに際どかったし。でも! 残念ながらムリです。
速すぎるから、トップ・スピードのエトォ。人間が肉眼で見えるスピードじゃない(笑)。
レッド・カードのシーンもそうだし、エトォのゴール・シーンもそうだし。
これは仕方がないのです。

「サッカーは難しいなぁ」と思ったのはアーセナルの先制のシーン。
あういう展開で数的不利なチームがセット・プレーでサクッとゴール、ってのは、
まぁ、別にビックリすることではないけど、
あの時間帯に取れちゃったことで逆に難しくしちゃったよなぁ、って。
ある程度、リスクをかけて点を取りにくるバルサの攻撃を凌ぐには 72 分は長過ぎる…。
もちろん、あんな状況だから贅沢は言えないんだけど、
もうちょっと 0-0 でのらりくらりといきたかったところだったよね。
点を取ることが難しいサッカーにおいて、点を取ったことで難しくなるなんて…。
まぁ、キッチリこじ開けちゃうバルサもさすがだけど。
後半から入ったイニエスタも効いてたし。
若いのにポイントをキチンと心得てる若年寄系。デコと並んでいい仕事してた。



でも、勝負を分けたのはオッサンだったね。なっつってもラーション。
メッシがさんざん話題をさらった今年のバルサだけど、
大事な所でキッチリいい仕事をしてくれました。
もう、これで彼は一生、永遠にバルセロニスタから感謝され、愛されるね。
ジュリもメチャメチャいい仕事してたし。
やっぱ、若者の勢いも大事だけど、大一番では経験がモノを言うね。
まぁ、勝負を決めたのが伏兵・ベレッチだったのは予想できなかったけど。
なんとなく、もうちょっとアーセナルが耐えて(場合によっては延長くらいまでもつれて)、
最終的には力尽きてバルサかな、と思ってたんだけど。
一気にひっくり返せるのはさすがだね。
アーセナルにとって一番不運だったのは、勝負のツボを心得ているベテラン、
まぁ、具体的にはピレスとベルカンプを
活かせなくなっちゃったことだね(特にベルカンプは観たかった!)。
そういう意味では、レッド・カードじゃなくて、
アドバンテージ+得点+イエロー・カードって判定になってたら、
その後の展開はもっと面白かったかもしれないけどね。

まぁ、試合自体は十分面白かったけど。
リュングベリも久々に「らしい」プレーを見せてたし、
アンリは相変わらず「ワン & オンリー」のアンリだったし。
プジョルとの 1 対 1 とかシビれたね。
サイドライン際でプジョルをジャンプしてかわして、
ボックス近くでマルケスをもう一度ボールを浮かしてかわしたシーンとか、
もう、アンリ以外ではあり得ない!
しかも、マルケスがかわされた後にカバーに入ったのがもう一回プジョル!
さすがバルサの魂! 火花バチバチな攻防は見応えあったね。
キーパーの出来がどっちも良かったのも試合が面白くなった要因かも。
アンリやエトォのシュートをあんなにとめるなんて!
もちろん、オレのお気に入りのジウベルト・シウバもデコも効いてたし。
ピッチの全ての場所で異常にレベルが高かった。

このバルサを率いているのが「ブラック・スワン」、
ライカールトだってのも感慨深い。
クライフ同様、オランダが生んだスターであり、
10 年以上前に「現代サッカー」を体現していた素晴らしい選手であり、
現代サッカーの基礎となっている当時の最先端のサッカーを
体現していたチームの「心臓」だった選手なんだから。
個人的にも大好きな選手だったし。デカくて、強くて、上手くて、美しくて。
そういう選手が、今、バルサを率いて、こういうチームで頂点に立つなんて、
ちょっと出来過ぎなんじゃね? って思っちゃうくらい。
「Sexy Football」を唱えたのはフリットでしたが、
「Save Sexy Football」を実現してくれたのがライカールトだったなんて!

やっぱり、今、最高のサッカーはここにあるね。
代表よりクラブにあるし、W 杯より CL にある。
あらためて思い返してみても、CL はクオリティーが高い。
優勝したチーム以外にも、目を魅くチームがたくさんあるし。
ミランもそうだし、今シーズンだったら何と言ってもビジャレアル!
ここ数年を思い返しても、モナコだったりポルトだったり PSV だったり。
ビッグ・クラブがビッグ・クラブとしての力とクオリティーをしっかりと発揮しつつも、
名前だけじゃ勝てない。全ての面でクオリティーが圧倒的に高い。
01-02 シーズンもそうだったけど(レバークーゼンが大旋風を起こして、
ファイナルではジダンのスーパー・ボレー!)、こんなのを見せられた後に、
W 杯を観て楽しめるか、不安です。



どうも、今年はやっぱバルサの年らしい。
バルサ自体はもちろん、アーセナルのセスク・ファブレガスだの、
ビジャレアルのリケルメだの、UEFA 杯を穫ったセビリアのサビオラだの、
バルサ人脈の活躍が目立ったからね、今シーズンは。
これも良い傾向。